特許権侵害と商標権侵害の警告書対応と損害賠償請求

特許権侵害や商標権侵害が発生した場合の対応方法と法的リスクについて解説します。メタタグの不適切な使用も権利侵害になる可能性があることをご存知でしょうか?

特許権侵害と商標権侵害の対応方法

特許権侵害の基本知識
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権利侵害の定義

特許権や商標権の侵害とは、権利者の許可なく特許発明や登録商標を使用する行為です

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侵害の種類

直接侵害と間接侵害があり、WEBサイトのメタタグでも侵害が発生する可能性があります

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対応の重要性

権利侵害に適切に対応しないと、損害賠償請求や差止請求、さらには刑事罰の対象となることがあります

特許権侵害における警告書の意味と対応方法

特許権侵害に関する警告書を受け取った場合、まずは冷静に内容を確認することが重要です。警告書は通常、内容証明郵便で送られてくることが多く、権利者側が侵害行為の停止や損害賠償を求める最初のステップとなります。

 

警告書を受け取った際の適切な対応手順は以下の通りです:

  1. 警告書の内容を精査する:どの特許権が侵害されているとされているのか、具体的な侵害行為は何かを確認します
  2. 専門家への相談:特許権の専門家である弁理士や知的財産権に詳しい弁護士に相談します
  3. 事実関係の調査:実際に侵害しているかどうかの技術的検証を行います
  4. 対応策の検討:侵害の可能性がある場合、設計変更や和解交渉などの対応策を検討します

警告書を無視することは最悪の選択肢です。無視した場合、訴訟に発展する可能性が高まり、結果として高額な損害賠償を請求されるリスクが増大します。また、侵害が認められた場合には、製品の製造・販売の差止めを命じられる可能性もあります。

 

特許権侵害の警告書に対しては、専門家のアドバイスを受けながら、誠実かつ迅速に対応することが、リスクを最小限に抑える鍵となります。

 

特許権侵害の損害賠償請求額の算定方法

特許権侵害における損害賠償請求額は、特許法第102条に基づいて算定されます。この算定方法には主に以下の3つの方式があります:

  1. 逸失利益方式(特許法102条1項)
    • 侵害者の販売数量 × 特許権者の単位当たり利益額
    • 特許権者の生産・販売能力を超える部分は対象外
    • 市場における競合品の存在など、販売できない事情がある場合は控除
  2. 侵害者利益方式(特許法102条2項)
    • 侵害者が侵害行為によって得た利益を損害額と推定
    • 侵害者の売上高から必要経費を差し引いた額
  3. 実施料相当額方式(特許法102条3項)
    • 特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額
    • 業界の標準的なライセンス料率を参考に算定

令和元年の特許法改正により、算定方法がさらに充実し、特許権者の保護が強化されています。具体的には、侵害者の生産能力等を超える部分についても、ライセンス料相当額の請求が可能になりました。

 

実際の訴訟では、これらの方式を組み合わせて請求することも可能です。例えば、東京地裁平成31年3月26日判決では、特許権侵害において約2億3000万円の損害賠償が認められました。

 

損害賠償額の算定は複雑であり、専門的な知識が必要となるため、弁理士や知的財産権専門の弁護士に相談することをお勧めします。

 

商標権侵害とメタタグによる侵害リスク

商標権侵害は、他者の登録商標と同一または類似の商標を、その指定商品・役務と同一または類似の商品・役務に使用する行為です。しかし、意外にも知られていないのが、WEBサイトのメタタグにおける商標権侵害のリスクです。

 

メタタグとは、WEBページの基本情報をブラウザや検索エンジンに伝えるために設置するHTMLタグです。SEO対策として、他社の有名商標をメタタグに含めることで検索上位表示を狙う行為がありますが、これが商標権侵害となる可能性があります。

 

「クルマの110番」事件(大阪地判 平成17年12月8日)では、検索エンジンの検索結果として表示されるWEBサイトの説明文は広告表示であり、商標としての使用行為に当たると判断されました。つまり、以下の条件を満たす場合、メタタグの使用も商標権侵害となります:

  • WEBサイトのディスクリプションメタタグに設定されたキーワードが他人の登録商標と同一または類似である
  • 当該WEBサイトの商品またはサービスが、登録商標の指定商品または指定役務と同一または類似である

メタタグによる商標権侵害が認められた場合のペナルティは重大です:

  • 侵害行為の差止め
  • 損害賠償請求
  • 刑事罰(個人:10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、法人:3億円以下の罰金)

WEBサイト制作時には、メタタグに使用するキーワードが他社の登録商標でないかを事前にチェックし、商標権侵害のリスクを回避することが重要です。安全なのは、普通名称や記述的な単語など、商標権が発生しないキーワードを選ぶことです。

 

特許権侵害の差止請求と仮処分命令の実務

特許権侵害が発生した場合、権利者が取り得る法的手段として「差止請求」と「仮処分命令」があります。これらは損害賠償とは別の重要な救済手段です。

 

差止請求の概要
特許法第100条に基づき、特許権者は侵害者に対して侵害行為の停止または予防を請求できます。差止請求が認められると、侵害製品の製造・販売等の停止、侵害品の廃棄、侵害に供した設備の除却などが命じられます。

 

差止請求の要件:

  1. 有効な特許権の存在
  2. 特許発明の技術的範囲への属性(侵害の事実)
  3. 侵害行為の継続または反復のおそれ

仮処分命令の特徴
本案訴訟(差止請求訴訟)の結論が出るまでの間、暫定的に侵害行為を停止させるための制度です。特許権侵害訴訟は通常1〜2年かかるため、その間の権利保護のために重要な手段となります。

 

仮処分命令の申立てには、以下の要件が必要です:

  1. 被保全権利の存在(特許権の有効性と侵害の蓋然性)
  2. 保全の必要性(仮処分を認めないと回復困難な損害が生じるおそれ)

実務上の注意点:

  • 仮処分命令の申立ては、本案訴訟と比較して迅速に審理されます(通常3〜6ヶ月程度)
  • 仮処分が認められるためには、担保金(数百万円〜数千万円)の供託が必要となることが多い
  • 仮処分命令が出された後、本案訴訟で特許権者が敗訴した場合、担保金から相手方の損害が賠償されます

東京地裁平成29年10月6日決定では、医薬品特許の侵害に対する仮処分申立てにおいて、特許の有効性と侵害の蓋然性が認められ、後発医薬品の製造販売の差止めが命じられました。

 

差止請求や仮処分命令は、特許権侵害への対応として非常に強力な手段ですが、その申立てには専門的な知識と戦略が必要です。知的財産権専門の弁護士に相談することをお勧めします。

 

特許権侵害における見出しタグの適切な使用方法

WEBサイト制作において、見出しタグ(h1, h2, h3など)の使用方法は、SEO対策として重要であるだけでなく、特許権や商標権侵害のリスク回避の観点からも注意が必要です。特に、特許技術や商標に関連するコンテンツを扱う場合、見出しタグの不適切な使用が権利侵害につながる可能性があります。

 

見出しタグの階層構造は、WEBページの情報を整理し、検索エンジンにページの構造を伝える重要な役割を持ちます。h1が最も重要な見出しとされ、以下h2、h3と階層が下がるにつれて重要度も下がります。この階層構造を正しく使用することは、SEOの基本ですが、同時に権利侵害リスクの管理にも関わります。

 

見出しタグ使用の基本ルール

  1. h1タグはページごとに1つだけ使用し、通常はサイト名や記事タイトルに使用
  2. h1の次に来る見出しはh2、その次はh3と順番を守る
  3. 見出しタグは、ページの階層を正しく表現するために使用する

特許権・商標権侵害リスクを回避するための注意点

  1. 見出しタグに他社の登録商標や特許技術名を使用しない
  2. 特に上位の見出しタグ(h1, h2)には、権利侵害リスクの高いキーワードを避ける
  3. 自社の技術や製品を説明する際も、他社の権利を侵害しないよう注意する

例えば、あるWEBサイトでh2タグに他社の登録商標を使用した場合、それが検索結果に表示されることで商標権侵害と判断される可能性があります。これは「クルマの110番」事件の判例からも明らかです。

 

また、特許技術に関するコンテンツでは、見出しタグに特許発明の名称や特徴を直接使用することで、あたかも自社の技術であるかのような誤解を与え、特許権侵害の疑いを持たれるリスクがあります。

 

安全な見出しタグの使用方法としては、普通名称や記述的な表現を用い、必要に応じて「〇〇社製」などの出所を明示することが挙げられます。また、自社の重要な技術やブランド名については、事前に商標登録を行うことも有効な防衛策となります。

 

WEBサイトのコンテンツ制作者は、SEO対策と権利侵害リスクのバランスを取りながら、適切な見出しタグの使用を心がけることが重要です。不明な点がある場合は、知的財産権の専門家に相談することをお勧めします。

 

特許庁のウェブサイトでは、商標権や特許権に関する基本的な知識が提供されています。

 

特許庁:商標権の効力